老後資金2000万円問題が話題となっておりますが、普通の会社員が銀行貯金だけで定年までに2000万円を貯めるのは、現代の状況では困難であると言えます。
日本の企業の給料水準は長く低い状態が続き収入は増えない上に、銀行の金利も、定期預金で良くて0.5%もありません。
そんな中で注目を集めているのが「貯蓄から投資」への方針転換です。
特に投資信託への投資は、これまで投資を行ってこなかった初心者の方にもおすすめ出来る投資方法です。
本記事では、投資初心者が投資信託で失敗をしないための方法を説明します。
投資信託とはなにか
投資信託とは、多くの投資家から資金を集めて大きな元手とし、投資の専門家であるファンドマネージャーが株式や債権、不動産などに投資を行って運用する商品です。
そして、運用益が出た場合には、その利益を投資額に応じて分配を行うという仕組みになっています。
投資を行う対象については、各投資信託で運用方針が決まっており、例えば「アメリカの株式全体」や、「日経225の対象企業全体」、「新興国の株式」などのようになっています。
投資家は、投資信託の対象となっている商品を選んで投資を行うことで、あとはファンドマネージャーが運用を行い、利益が出れば分配してくれるので、株式投資やFXのような投資方法と比べるとハードルの低い投資方法と言えるでしょう。
投資信託のメリット
投資信託を購入して運用することのメリットは大きく分けて5つあります。
ここではそれぞれのメリットについて分けて説明していきます。
少額からできる
株式投資や不動産投資を行うには、それらを購入するために多額の資金が必要になります。
株式投資であれば、企業にもよりますが大企業であれば1単元(多くは100株)を購入するのに数十万〜100万円以上もかかってしまいます。
不動産投資でも、住宅ローンを使うにしても頭金として数百万円が手元にないとはじめるのは難しいです。
FXなどの信用取引は、小額から始めることも可能ですが、これは借金をして投資をしていることと同じですので、投資の初心者にはおすすめできません。
一方、投資信託であれば1口数千円から始めることも可能ですので、ほかの投資方法と比べると「今ある余剰資金」の範囲内で始めることができ、投資を始めるハードルは非常に低くなっています。
投資の専門家が運用する
株式投資ですと、価格は刻一刻変わっており、それを適切なタイミングで売買を行う必要があります。
デイトレーダーのようなアクティブな取引をしないにしても、最低限数時間~1日毎に株の値動きを確認したり、会社四季報を読んで企業分析をしたり、ニュースや新聞をみたりして経済動向や要人の発言、国際情勢を把握したうえで投資を行う必要があります。
また、企業や経済状況の分析を行うためには最低限の経済知識が必要となるため、投資を始めるためには本を読んだり、銀行や証券会社が開催しているセミナーに参加をする必要が出てきます。
これを、普段会社で働いている会社員が行うとなると、大きな負担になってしまいます。
株式投資に比べて、投資信託であれば運用方針から自分の好きな商品を選んで投資を行えば、あとは投資のプロであるファンドマネージャーにお任せで運用をしてくれます。
もちろん、運用方針を選ぶ段階でも多少の知識は必要となりますし、月次レポートや運用報告書を読んで定期的に運用実績の確認を行う必要はあります。
しかし、投資初心者である会社員が始める投資方法としては、株式投資と比べてハードルが低いと言えます。
分散投資ができる
投資を行う上で重要なことは、投資先を複数に分ける「分散投資」です。
例えば、A社の株を500万円持っていたとして、A社が倒産をしてしまったら手元には1円も戻りません、
しかし、A社・B社・C社・D社・E社の株を100万円ずつ持っていれば、仮にA社が倒産しても損失は100万円ですし、他の4社の業績がよければその損失を補填出来る可能性もあります。
ただし、株式投資で分散投資をするためには、多額の資金が必要になってしまいます。
その点、投資信託であれば、少額ずつ購入できるため多額の元手がなくても分散投資を行うことが出来ます。
さらに、投資信託の運用方針は複数の国・企業の株式や債権を対象にしています。
そのため、「日本株式全体」が投資対象であれば、仮に数社業績が悪くても日本の経済全体が向上していれば運用益が出ます。
また、「世界全体の株式への投資」という運用方針であれば、日本の経済が低調でも、アメリカやヨーロッパの経済が好調であれば運用益を出すことも出来るのです。
このように、1つの投資信託の商品の中でも分散投資が行われているので、個人で1社ずつ株式を購入して運用するよりもリスク分散が容易に出来るというのが投資信託の大きなメリットです。
世界規模で投資ができる
現代はインターネットを使って、全世界の株式や債権、不動産に対して投資を行うことが可能となっています。
しかし、経済が好調と言われているインドの企業に投資をしようと思っても、インドの経済事情や各企業の情報を得て分析を行うことは、なかなか難しいことです。
特に、投資を本業としていない一般の会社員が、仕事の後にこれらを分析しようとすると非常に大きな労力を要します。
投資信託であれば、運用方針で「インド企業」や「アジア好調企業」といったものを運用方針に掲げているファンドに投資をすれば、ファンドマネージャーが専門的に分析を行い、運用を行ってくれます。
個人では投資がしにくい海外への投資を気軽に行うことが出来るのも、投資信託の大きな魅力です。
透明性が高い
投資信託は、原則毎営業日に「基準価格」が公表されており、価格の推移がしっかりと確認することが出来ます。
また、投資信託では決算ごとに監査法人からの監査を受けることが義務付けられており、その結果は「請求目論見書」で確認することが可能となっています。
このような対応から、不正などが起きにくい高い透明性を確保されており、安心して自分のお金の運用を任せることが出来るようになっています。
投資信託で運用する際の注意点
このように、投資信託には多くのメリットがあり、普段仕事をしている方が投資を行うのに非常に適している投資方法と言えます。
しかし、何事にもデメリットが存在します。
投資信託を行う上での注意点も知ったうえで投資を行うことが重要になります。
ここでは、投資信託を行う上での注意点を4点説明します。
元本保証ではない
投資信託は銀行への貯金とは違い、預けたお金を運用していく「投資」です。
そのため、投資の成績が悪い場合には元本は保証されず、預けたお金が減ってしまうリスクがあります。
確かに投資信託は分散投資を行って、リスクの分散を行っていますが、新型コロナウイルスの世界的流行や、ウクライナ問題、世界的な原油高などの影響で世界経済全体が低調となる場合には、投資信託でも損益を出してしまう可能性が十分にあります。
そのため、投資信託を行う場合には余剰資金で行う、また貯金などの元本保証の商品と組み合わせて行っていくことが重要になります。
手数料がかかる
投資信託は、運用をしてもらう代わりに各種の手数料が発生します。
手数料の多くは、引かれた段階で基準価格として公表されているのであまり意識することはありませんが、手数料が高いとそれだけ利益も増えにくくなってしまうので、どんな手数料にいくらかかっているのかを把握しておくことは重要です。
主な3つの手数料について説明していきます。
購入時手数料
投資信託を購入する際の手数料で投資額の〇%という形で表示されます。
この手数料は、運用者が各投資信託ごとに上限を決めていて、販売する金融機関がその範囲のなかで決めています。
また、投資信託の中には購入手数料がかからない「ノーロード型」という商品もあります。
そのため、手数料を抑えたい場合には、ノーロード型の投資信託を選ぶのも選択肢の一つです。
信託報酬
投資信託を運用・管理していくための費用で、年率で表示されます。
毎日の基準価格では、この年率から計算された額を365で割った額が差し引かれて表示されています。
信託財産留保額
投資信託を解約(売却)する際に発生する手数料のことです。
信託財産留保額に関しては、かからない投資信託も多くあります。
利益は課税対象
投資信託の分配金や売却益には、20.315%の所得税の課税対象となりますので、運用益が出ても、その約1/5が税金として減ってしまうことになります。
しかし、「NISA」や「つみたてNISA」で投資信託を利用することで分配金・売却益が非課税となります。
そのため、投資信託はNISA・つみたてNISAと相性のいい投資とも言えます。
タイムリーな取引はできない
投資信託は、複数の株式や債権を運用しているため、株取引のようにその時その時の値動きに合わせて売買をするということが出来ません。
投資信託の売買の注文は、その日の基準価格を公表する前に締め切られており、基準価格が公表された際に、売買価格が決定します。
正確な購入金額・売却金額が、注文を出す時点ではわからないという点にも注意が必要です。
投資信託で成功する秘訣
投資信託は株式投資などの他の投資方法よりも、初心者向けな資産運用法であると言えますが、それでも成功をするためにはコツがいります。
投資信託を成功させて、利益をだすための秘訣をここでお伝えします。
長期的視点で考える
投資を始めたばかりの初心者にありがちな失敗の一つが、購入した投資信託の価格が下落したときに、損失を増やしたくないがために元本割れの価格で売却してしまうことです。
これを繰り返してしまうと、自分のお金が増えるどころかどんどんと減ってしまいます。
株式投資やFX投資のような短期的に売買を繰り返して資金を増やす投資と違って、投資信託は中・長期的に運用することを前提としています。
経済状況は日々変化して、好調なときも低調なときもありますから、せっかく購入した投資信託の基準価格が一時的に下落することももちろんあります。
しかし、長期的に運用していけば、経済が回復して基準価格が上昇し、収益が出ることも多くあります。
投資信託を行う際には、数日程度の値動きに一喜一憂しないで、長期に保有して老後資金を貯めるくらいのつもりで取り組むことが重要です。
手数料が安いものを選ぶ
投資信託には3種類の手数料がかかることを説明しました。
これらの手数料は、投資信託から得る収益を結果的に減らしてしまいますので、出来るだけ安いものを選ぶことが、長期的に利益を出すために重要です。
「信託財産留保額」に関しては、かからないものもありますし、かかっても0.3%程度と非常に少額ですので、あまり気にしなくても良いでしょう。
「販売手数料」は、ノーロード型のようにかからないものを中心に検討しましょう。
「信託報酬」に関しては、運用者にとってはメインの収入となるため、高く設定されているものもあります。
中でも、「アクティブファンド」と呼ばれる種類の投資信託では、信託報酬が高く設定されがちです。
アクティブファンドでは、ハイリスクハイリターンな商品に対して投資を行っていくものもあるため、損失が出る可能性も高くなります。
初心者のうちには、こういったものは避ける意味でも、信託報酬の低い投資信託を選ぶのが無難でしょう。
一度に全額投資をしない
投資信託の価格は、上昇することもあれば下降することもありますので、一度に手元の資金をすべてつぎ込んでしまうと、高掴みしてしまい利益を出しにくくなってしまうこともあります。
このようなことに対して有効なのが、同じ投資信託を複数回、期間を開けて購入する方法で、「ドルコスト平均法」と言います。。
ドルコスト平均法を利用することで、一時価格が上昇しているときに購入してしまっても、次に価格が下落している時に購入すれば、平均の購入価格を下げることが出来て、長期的に利益を大きく出来る可能性が高くなります。
投資信託のはじめ方
投資信託を始めるには、事前に準備が必要になります。
ステップに分けて、一つずつ説明していきます。
証券口座を開設する
投資信託に投資をするには銀行の口座からではできません。
株式投資と同様に、銀行や証券会社の証券口座を開く必要があります。
証券口座は、ネット証券であれば、現在はパソコンやスマホからすぐに作ることが出来ます。
投資信託をするうえでの手数料に関しても、大手銀行や店舗を持つ証券会社よりも、ネット証券の方がお得に設定されています。
また取引に利用できるアプリなどもネット証券のほうが充実していることが多いです。
そのため、これから証券口座を開設する方には、ネット証券を開設することをおすすめします。
NISA口座を開設する
NISAを利用しないのであれば、この手順は省略できますが、運用益・売却益が非課税になる非常にお得な税制度なので、ぜひこの機会にNISA口座も開設しましょう。
NISA口座を開設するには、証券口座を開設したうえで、さらに手続きが必要になります。
NISA口座を開設するには、本人確認書類やマイナンバー確認書類が必要になるため、事前に準備をして、郵送等で証券会社に提出する必要があります。
また、開設手続きが完了するまで1~2週間程度かかることもありますので、投資信託をNISAで始める場合には、早めに口座開設手続きをしておきましょう。
証券口座に入金をする
投資信託に投資を行う資金を証券口座に入金します。
系列の銀行口座がある場合には、手数料なしで振り込める場合もあります。
また、ネット証券であれば、手続き自体もアプリから行うことができ、即時振り込みなどを行いすぐに入金作業が完了するものもあります。
投資信託を選んで投資する。
自分が投資をしたい投資信託を選び、投資をしましょう。
この際、投資方法としてスポット購入と積み立て購入を選べます。
ドルコスト平均法を利用するためには、積み立て購入も有効な手段になりますので、自分に合った商品、方法で投資を始めましょう。
まとめ
投資信託は始めるハードルも低く、これまで投資をしたことがない初心者にとっておすすめの投資法と言えます。
投資信託は、少額から始められたり、ファンドマネージャーに運用を任せられるといったメリットがあります。
また、分散投資を行い、リスクを低くすることが出来るという魅力もあります。
元本割れの可能性や短期的な儲けは出にくいといった注意点もあるものの、これから資産形成のために投資を始めようとしているひとにとって、投資信託はおすすめの方法と言えるでしょう。
これまで投資をしてこなかった人や、「投資って怖い」と思っている方も、この機会に是非投資信託を始めて、投資家デビューをしてみましょう。