生活をしていくうえで、収入は大いに越したことはありません。
しかし、現在の日本の企業の給料水準は30年間上がらずに低い状態が続いています。
それに加えて、税金や社会保険料は上昇をしているため、可処分所得は実感できるほどの上昇を見込めません。
そんな中で、少しでも手元に残る可処分所得を増やすために重要なのは、所得控除を増やして節税を行うことです。
本記事では、可処分所得を増やすために、サラリーマンが出来る節税のための控除制度について説明します。
可処所得とは
「可処分所得」という言葉は、あまり聞きなれないかもしれません。
可処分所得というのは、一般的な言葉でいうと「手取り収入」のことを指します。
一般的なサラリーマンは、会社から毎月給料を受け取りますが、会社が払った給料がすべてが自分のものにはなりません。
給料明細を見ると、「支給総額」から、所得税・住民税といった「税金」と、健康保険・雇用保険といった「社会保険料」が引かれて、「差し引き支給額」となっています。
可処分所得というのは、この差し引き支給額のことを指して、生活費や趣味、貯蓄などに回すことのできるお金のことと考えてください。
ここ30年間、日本人の平均給料はほとんど上がっていません。
しかし、少子高齢化の影響で社会保険料や税金といった国民の負担は大きく増えています。
そのため、定期昇給などでわずかに給料が上がっても、国民負担も上昇しているため可処分所得が増えないという現象が起きているのです。
可処分所得を増やす方法
可処分所得を増やすには、「収入を増やす」か「支出を減らす」かのどちらかの方法を摂ることになります。
しかし、先述した通り収入を増やしても、税金や社会保険料も増えているため思うように可処分所得は増えません。
それどころか、収入を増やしたがために負担額が増えて、可処分所得が目減りしてしまう可能性まであります。
可処分所得を増やすために有効なのは「支出を減らす」ことです。
この支出ですが、節税を行うことで税金を減らして、手元に残る可処分所得を増やすことを狙います。
税金は、所得に応じて増減しますので、所得が低いほど安くなります。
そのため、税金をかける前の所得を減らす=所得控除を増やすことで、税金を安くして可処分所得を増やすことが出来るのです。
取り組み方
ここでは、所得控除を増やすために利用できる制度をそれぞれ説明していきます。
節税というと、フリーランスの方が行うもので、サラリーマンには縁がないように思われるかもしれません。
しかし、実はサラリーマンでも利用できる制度もありますので、「どうせ自分にはない」と思わずに、確認してみてください。
扶養控除
生計を同一にしている16歳以上の親族がいる場合には「扶養控除」を受けることが出来ます。
扶養対象者の年齢によっても増減はしますが、一定額の金額を所得から引くことが出来るので所得控除を増やすことが可能になります。
また、特に70歳以上の高齢の親族を扶養すると「老人扶養親族」という区分になり、控除額が通常より高くなります。
一般の控除対象扶養親族の控除額が38万円なのに対して、老人扶養親族ですと48万円もしくは58万円の控除を受けることが出来ます。
両親などの親族と同居や生計を同一にしている方は、一度収入などの条件を確認し、ご自身の扶養に入れることを検討してみると良いでしょう。
医療控除
自分と、生計を同一にしている親族の医療費の自己負担額(保険を適用している場合には、実際に窓口で支払った金額)が10万円を超えている場合には、申告を行うことによって、その超過分に対して所得控除を受けることが出来ます。
この医療費の対象となるのは、実際に病院や薬局に支払ったものだけではなく、病院に通うための公共交通機関の費用も含まれます。
もし家族がケガや病気で入院や通院したり、出産で自己負担が出ていたりする場合には、医療控除を受けることができる可能性もありますので、確認をしてみてましょう。
セルフメディケーション税制
「セルフメディケーション税制」というのは、スイッチOTC薬品(元々医師の処方が必要だったが、市販でも買えるようになった薬)を購入した金額が12000円を超える場合には、その購入費用を88000円を上限に所得控除するというものです。
医療控除では10万円以上の自己負担がないと申請が出来ませんが、セルフメディケーション税制では普段使っている市販薬でも受けられる可能性がありますので、控除を受けるハードルはグッと下がります。
セルフメディケーション税制の対象となるスイッチOCT薬品には、パッケージに対象薬品であることが明記されており、購入したレシートにも対象であることが記載されています。
例えば、花粉症の薬である「アレグラ」や「アレジオン」、頭痛や生理痛薬の「ロキソニンS」や「バファリンEX」、風邪薬の「ルルアタックEX」や「パブロンAG錠」など、一般の人にも馴染のある市販薬も対象商品です。
これらを購入した際には、レシートを捨てずに合計金額を確認してみてください。
ただし、このセルフメディケーション税制は、医療控除を受ける人は併用できませんので注意してください。
生命保険料控除
「生命保険控除」は、会社で行う年末調整の時に書類を提出するので、馴染があるかたも多いかと思います。
個人で支払っている「一般生命保険料」、「介護医療保険料」、「個人年金保険」に対して、収入金額に応じて一定金額の所得控除を受けることが出来ます。
この所得控除も、自分だけでなく生計を同一にしている家族のものも対象となるため、配偶者や子供、親などにかけている保険料も忘れずに申告するようにしましょう。
地震保険料控除
普段使用している住居の火災保険に地震保険を付加している場合には「地震保険料控除」を受けることができます。
地震保険は、地震の際に被害を受けた建物および家財に対しての保障ですので、持ち家でなく賃貸物件に住んでいる方でも加入することが出来ます。
地震保険は単独では加入することができず、必ず火災保険とセットでの加入となりますので、現在地震保険に未加入という方は、火災保険の見直しと同時に地震保険への加入も検討してみてください。
特定支出控除
サラリーマンであっても、業務に必要なものへの出費を経費として計上できるのが、この「特定支出控除」です。
控除対象は6種類に別れています。
- 通勤費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 勤務必要経費(図書・被服・交際費)
これらの費用は、会社から支給されている場合には対象外となるため、すべての人が利用できるわけではありません。
さらに、特定支出控除額が給与所得控除額1/2相当額を越えていなくては適応となりません。
そのため、なかなかハードルの高い物ではありますが、例えば職務上必要な資格を取るために専門学校や大学に通っている場合には、その学費が適応される可能性があります。
もしご自分に当てはまるものがあれば、会社に申し出て申請してみましょう。
住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
マイホームを購入したり、リフォームを行うために住宅ローンを利用した場合に受けられるのが「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」です。
借入者が一定の条件を満たす場合に、年末時点でのローン残高の1%(2022年以降は0,7%)を最大13年間控除を受けることが出来ます。
控除額や控除期間は、住宅に入居した時期によって異なりますが、住宅ローンは高額な借入金ですので、1%の控除でも大きく可処分所得を増やすことが出来ます。
ふるさと納税
テレビCMなどでも頻繁に見るようになった「ふるさと納税」ですが、これは自分の好きな自治体に対して寄付を行うことで、翌年の住民税から寄付金控除を受けられる制度です。
ふるさと納税は、翌年の住民税を前払いしているものですので、実際には節税とは言えません。
しかし、本来払うだけで目に見えたリターンのたい税金に対して、ふるさと納税なら自己負担金2000円をで、寄付をした自治体から返礼品をもらうことが出来ますので、お得な制度と言えます。
また、返礼品にお米などの生活必需品を選ぶことで、それらの購入金額を節約し、可処分所得を増やすことにも繋がります。
ふるさと納税の寄付金の上限は源泉徴収があればシミュレーションをすぐに行うことが出来ますので、まだやられていない方は利用を検討してください。
確定拠出年金(iDeCo)
「確定拠出年金(iDeCo)」には、個人型と企業型があり、それぞれ購入できる金額などが異なりますが、老後資金のための制度です。
毎月一定金額の積み立てを行い、あらかじめ用意された運用商品を選んで投資をしていきます。
この際に、積み立てに回した掛け金は全額所得控除となり、また運用益が出ても、その収益も非課税となります。
注意が必要なのは、この制度はあくまでも「年金」であるため、60歳までは預けた金額を下ろすことがないという点です。
すぐに利用できるお金ではないですが、毎年の所得控除は大きくなるので、利用を検討してみてください。
NISA(小額投資非課税制度)
「NISA(小額投資非課税制度)」は、証券会社に開設したNISA口座で取引した金融商品が、年間120万円まで、最長5年間はその運用益および売却益に対して非課税になるという制度です。
取引可能な金融商品も幅広く、投資信託・株・ETF・REITなど幅広く、限度額の範囲内であれば自由に組み合わせることが出来ます。
また、確定拠出年金とちがって自分の好きなタイミングで売却して現金化することが出来るのも、NISAの魅力の一つと言えるでしょう。
うまく運用をすれば、収入を非課税で増やすことも出来るため、可処分所得を増やすための有力な手段の一つと言えます。
まとめ
日本の経済成長は低調な状態が続いており、今後も給料水準が大きく上がることは期待できません。
また、少子高齢化も進行しており、国民負担も増え続けていくことが予想されます。
そのような状況で、可処分所得を増やすには節税を行うことが非常に有効です。
「節税」というと、フリーランスの特権のようなイメージがありますが、今回説明したようにサラリーマンにも節税を行う方法はあります。
特にふるさと納税やセルフメディケーション税制などは手軽に利用することが可能ですので、ぜひ活用してみてください。